
この時期に活躍する長生社の秘密兵器、それが写真の洗濯機です。でっかいんですよ。Yシャツだったら何十枚も洗えるし、布団も丸ごと洗えるみたいです。コインランドリーを利用したことのある方なら、見たことがおありでしょう。あれとほとんど同じものだと思うんですが、それよりも少し大きめで、乾燥機能は付いてはいません。
脱水時には結構恐ろしい勢いで回転しますから、脚は下のコンクリートにアンカーで打ち付けてあります。凄く高機能で、ドラムの回転数や回転方向の切替ができたり、蒸気を吹き込んで決められた温度まで水温を上げたり、途中で洗剤を一定量投入したりっていうようなことをプログラムできます。蔵では布の洗い物に洗剤は使いませんけどね。
冬の造りの間には、麹ムロから毎日洗い物は出てきますから、当然この洗濯機も毎日使うんですけど、1日中動いているわけではないので稼働率とするとそれほど高くありません。今の時期に洗っているものというと、ズバリもろみの圧搾機の濾布やらなにやらの蔵の片付けをする時に出てくる洗い物なんです。
同業者の方から見れば「今ごろ何やってんだ?」と思われるかもしれませんが、5月の連休まで酒を搾っていて、その後に火入れ作業なんかもあって、最終の片付けがようやく最近終りつつあるくらいのスケジュールなんですよ。年間雇用の従業員による酒造りの苦しいところではあります・・・(汗)。
当然いいお値段がするんですが、この機械に関して言えば、買ってから5年くらいで元が採れちゃうんじゃないかなぁ。蔵の仕事の中で、布類の洗い物にかかる手間っていうのは相当なものです。私が蔵に入った頃には、造りの間だけ3人ほど地元のオバさんを雇っていましたが、彼女達の仕事の半分は布や容器等の洗い物でしたね。
特にもろみの圧搾機の濾布は、とても厚くて重い畳ほどの大きさの布を2枚縫い合わせてあるもんだから、どえりゃぁ重いわけですよ。こんな布を洗う時には男手も借りてやってましたね。そんなでかい物をどうやって洗うかっていうと、手でなんて洗えませんから、足で踏んで洗うんです・・・こりゃまた、原始的なんだな、これが(笑)。
深さ30センチ、直径1メートルほどプラスチックの桶にその布を数枚入れて、裸足か専用の長靴を履いて、ジャブジャブと踏むんです。踏み続けていると足腰も痛くなってきますから、適当な長さの杖をついて踏んでましたね。「さて、遠足に行くか」なんて言って仕事したもんです。
全部で70枚以上もありましたから、ひと通り洗うだけだって大変ですが、それを臭いや汚れが取れるまで何回も何回も繰り返し洗って、ようやく杜氏のお許しが出たんですから、私にとってはいやな作業のうちのひとつでしたね。何にも考える必要はないんで、気楽ではありましたけどね(笑)。
そんな洗い方でしたから、どこまできれいになっていたのかは今となっては多少疑問ですが、大きな問題もなかったところを見ると、そこそこにはなっていたんだと思います。それでも、いつまでたっても汚れが取れないような気がして、いつも何とかならないかと思ってました。この大きな濾布だけはクリーニング屋で洗ってもらうっていうお蔵もありましたね。
それがこの洗濯機を使えば、1回で10枚以上洗えちゃうし、1回洗えばほとんどの汚れは取れちゃうくらいになるし、本当にオバさん2人分は働くっていう感じですね。そう思えば、その人件費分くらいはすぐに稼いでくれるような気がします。それに、蔵で使う布類は他にも大きな物が多いですから、その手間を考えれば便利なもんだと思うんです。
ただし、問題がないわけでもないんです。きれいに洗える半面、洗い過ぎちゃうというか、布の痛みが以前より激しいような気がしますね。大きな布を痛まないように専用に洗うための洗濯機もあるんです。汎用性が低いっていう事で写真の機種を選んだ経緯もありますが、やはりどんな物にも一長一短があるんですね。
この機械がフル稼働していると、あのオバさんたちとえっちらおっちら布を踏んでいた頃が懐かしく思い出される反面、やることをどんどんとやってもっと前に進まなくっちゃと思ったりもするんです。
□□□ 私としてはかなりの高得点ですな □□□
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