
ほぼ毎日、夕方の仕事の上がり際に最後のひと仕事っていう感じでやっつけるのが、『ざる返し』という作業です。私がやることもありますし、他の蔵人がやることもありますが、ざる返しが始まると、「ああ、今日も一日終ったなぁ」という安堵にも似た感慨が胸に沸き起こります。
私自身は、みんなが帰った後に麹の手入れやら何やらしなくちゃならないので、それで一日が終わりってぇわけじゃぁないんですけど、ホッとする瞬間ではありますね。大して時間はかかりません。ざる返しが終って、米を蔵の中にしまうと、「ご苦労様でした」ということになって、蔵人は帰っていきます。
以前も書きましたが、今では蔵に寝泊りするのは寂しいことに私一人になっていますから、そこでポツンと独りぼっちになっちゃうんですが、出稼ぎの蔵人がいた頃は、それから晩酌と夕飯になりますから、なんともウキウキした気分のひと時でした。何となく、雰囲気分かってもらえるんじゃないですかね(笑)。
このざる返しっていのは何のための作業かっていうと、その日の午後イチにざるで洗ったお米を、別のざるや布の上にザッとあけるだけのことなんです。我が社では麹用のお米は、丁寧に扱うために全てざるで洗います。ざるの数にして8個になります。
洗米して水切りした直後には、まだお米の表面に水分が付着したような状態なわけですが、時間とともにそれが米粒の中に浸透していきます。しばらくしてそれらが全て米の芯に向かって入り込んでしまうと、全体が締まって、ざるの中で大きな塊みたいな状態になるんです。
翌日の朝、お米を蒸すための『コシキ』という大きな蒸し器の中に張り込む時には、お米はサラサラの状態になっていないと、蒸し上がりが手触り良く仕上がりません。このサラサラの状態っていうのもお米の品種によって違ってきたりしますが、とにかく一粒一粒がくっついていない状態が好ましいわけです。
そこで、固まりかけのお米を、別のざるに返してあけ直すことで、サラサラの状態にしようってぇわけです。ですから、二人一組になって、ひとりがざるの米をあけて、もうひとりがドサッと落ちてきた塊をほぐしながら、別のざるに入れ直すんです。
もう一点、いくらざるで水がうまく切れるといっても、ざるの上部と下部ではそのきれ方に違いがあって、ざるの底の方は案外水が残ってベタベタした状態になっているんです。その上下の水分のばらつきを均一にするためっていう意味合いもあるでしょうね。
このざる返しのやり方は、各お蔵でいろんなやり方があるでしょうし、水切れの良いざるを使っていればやらない蔵もあるそうです。ステンレス製の網の開口率の高い1万円もするようなざるならいいんですが、ホームセンターで880円で買ってきた安物のざるじゃぁそういうわけにもいきません(汗)。
今日は何となくホッとするざる返しのお話でした。メインの仕込み作業以外にも、蔵にはこういった細々した仕事がたくさんあります。一日の最後に位置しているのがこのざる返しってぇわけです。私はざる返しが終ると、今晩の夕飯は何だろうと考え始めます(笑)。
□□□ なんか順位がどんどん落ちていくような気が・・・(涙) □□□
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