専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

悟り

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酒の仕込みがいったん始まると、毎日同じ様な作業が春まで延々と続くことになります。米洗い、蒸し、麹造りにもろみの仕込まで、一連の作業全てを毎日少しずつこなしていくんです。それは気の遠くなるような地道な作業であって、よほどの忍耐力がないと同じテンションで酒と対峙することは出来ないと思うんです。そんなこと自分で言うのもなんですけどね(汗)。

そして、毎日の作業の結果を見て、昨日より今日、今日より明日というモチベーションを持ち続けた人だけが、その造りのシーズンにひとつくらい『悟り』を得られるんじゃないでしょうかね。それは、一生懸命やった人への神様からのご褒美と言ってもいいんじゃないかな。

相手が生き物だから余計ですが、「こういう条件でこういう事をすればこうなる」というキッチリとした結論が得られにくいのが酒造りの難しいところであり、面白いところなのかもしれません。それに、ひとつの結論、例えば麹の出来不出来に関しても、そこに関係する要素が多すぎちゃって、どの要素が変わったから良い出来だったのかっていう判断がしづらいんですよね。

名杜氏っていうのは、そういう姿勢で何十年も酒を造り続けてきて、自分で開眼した『悟り』を何十個と持っておられるわけです。私なんか高々18個程度のもんです・・・いや、そんなにねぇなぁ、18年も蔵に入ってて大して成長してないじゃん。自分で書いてて情けないよ・・・(涙)。ですから、私がどう逆立ちしたって彼らにかなうわきゃないんです。経験が全てと言っても過言ではありませんね。

でもね、やっぱり一生懸命にお酒を造っているこの期間中には、「これだっ!!!ついにオレは麹造りの要点を発見したぞっっっ!!!」っと思える場面に何回か遭遇します。この『何回か』っていうのが喰わせもんでね、そのほとんどは勝手な思い込みや思い違いだったりして、大抵の場合『未知との遭遇』に終ります(笑)。

ところが、そんな数限りない思い違いを積み重ねていくうちに、ひとつくらい揺るがざる信念みたいなものが自分の中に生まれてくるんですよ。これは、パッと霧が晴れるように目の前に現れるもんじゃなくて、だんだんと「そうかもしれないなぁ」っていうのが「そうに違いない」に変わっていくような過程なんですが、それが本当の『悟り』なのかもしれませんね。

実を言うと、今日の麹の出来は抜群に良かった(ような気がする)んです。そこで思うわけだぁ、「そうか!あの操作のタイミングを少しずらせばいいんだ!そうすりゃぁ毎回こんなにいい出麹にできるぞ!」って。こんな時には、麹の仕事をしに2階に上がる足取りも軽やかでんがな。

今日なんかルンルン気分で仕事しちゃうわけですが、たぶんね明日麹を出してみると、「おっかしいなぁ、こんなはずじゃぁないんだけどなぁ・・・」ってことになるわけです。大発見したつもりになっているそのポイントを押さえたはずなのに、結局同じ様にはうまくいかないじゃんってぇことで一件落着(涙)。

真理はいつも手からすり抜けていってしまうものなのかもしれませんが、そんなほんのちょっとした進歩のために努力することを惜しまないのが職人の世界なのかもしれませんね。私のこれまでの経験で言うと、進歩すればするほど、結局、教科書にある標準の作り方に近づくだけなんだな、これが(笑笑笑)。


□□□ 素直に教科書通りにやりゃいいのに □□□
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コメント

先日

「あいだみつを」の息子さんのお話を聞きました。いっぱい誤解していました。プロの書家として、一晩に100枚単位で書いて、その中の良い1枚を選ぶとのことです。同じように一冬に少しでも良い酒をと思いつつやり続けるのでしょうか。今日明日忘年会です。休み中は、金沢の宮田の車麩の卵とじで一杯やります。

  • 2007/12/27(木) 12:54:19 |
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  • ヨコハマ #-
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ぶどうやも同じです。

私なんかまだ5回しかちゃんとぶどうつくってません。

試行錯誤、思考さくご、施工サクゴの繰り返しです。
40回やってる両親がまだわかんないことがなんで私ごとき若葉マークが・・・・。
基本に忠実にするといいかんじになる気が漠然としてます。

>>先日

きっと同じ精神状態でしょうね。
次は、次は、今度は、今度は、と同じ事を何回でも繰り返すような感覚って言えばいいでしょうか。
ただ、書道は際限なく繰り返せますが、もろみや麹の仕込みはどうがんばっても1日1回に限られるっていう点がちょっと違うかも・・・。
車麩の卵とじ、私も大ファンになりました!
女房に言って私も作ってもらおーっと(笑)。

  • 2007/12/27(木) 17:55:45 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

>>ぶどうやも同じです。

その5回がすぐに10回になり20回になって、それでもよく分かんねぇっていう結論なんでしょうね。
基本っていうのは、長年に渡る先達の試行錯誤の最大公約数ですから、やっぱり大きな意味があるんだと思います。
私も、結局は基本に忠実にやれているかどうかがポイントになるんじゃないかと思っています。
大体基本どおりっていうんじゃダメなんです。
まず、完璧に1回基本を再現してみると、意外に見えてくるものが多いんじゃないでしょうかね。
完璧に基本を再現するって、本当はチョー難しいことだと思いますけど・・・(汗)。

  • 2007/12/27(木) 18:03:03 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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