今の子供達は、現代技術を駆使したとってもリアルなゲームの世界にのめり込んで、うまくいかなくなるとリセットして最初からやり直します。これが現実世界でも通用するようなイメージを持ってしまうと怖いやねぇ。自分の人生は、たった一本の道しか進むことはできないのにね。私的に言うと、四次元の時空間のたった一本の曲線とでもなりましょうか(笑)。
人生にリセットはあり得ませんが、私もずーっと考えていた時期がありました。「この酒造業界をリセットするにはどーすりゃいいんだ」ってね。一体どこまで戻ればいいのか、どの段階を初期状態だと考えれば間違いがないのかってね。
既にどん詰まり状態の酒屋家業の未来が、このままの延長線上にあるとはとても思えませんでした。もう一度どこかの時点からかやり直して、これからこの酒造業界を発展させていくために、間違いのないスタート地点に立たなくてはなりません。
考え方とすると、後ろ向きに思われるかもしれません。日本酒の未来をどう描いて、それにどの様にアプローチしていくのかと考える方がポジティブな感じですもんね。しかし、温故知新のことわざにもあるように、あの時の私には今自分の立っている場所が、既にここなら大丈夫という位置からは外れてしまっているように思えて、なにか後ろを振り返らざるを得ない心持ちだったんだと思います。
何年間も考えていました。これなら間違いないはずだと思える考え方に至ったとしても、現状を鑑みて不可能だと断念してしまうばかりで、「こんな事真剣に考えても意味がないんだ、成り行き任せでも何とかなるさ」って自分を誤魔化していたような部分の方が多かったかもしれません。今考えても苦々しい日々でしたね。
それでも、やっぱりケツに火は点くもんです。「このままじゃ、絶対に絶対に絶対にダメだ!」と思うようになっていました。リセットしてどこまで戻るのか考えることには辟易していましたが、頭の中で何万回やったか分からないシミュレーションでボツになっていない部分をつなぎ合わせました。そして、「とりあえず純米酒からもう一度やり直そう」と思ったんです。そこからのスタートなら間違いないだろうと。
時代でいえば、戦前にもどろうってな感じでしょうか。もっと前に戻る考え方もあります。酵母の増殖のさせ方を、それなりの機関が作った優良酵母を添加するんじゃなくて、昔ながらの空気中の酵母を捕まえて増殖させるやり方にするとか、科学的な薬品を一切使わないようにするとか、有機無農薬のお米を使うとか・・・。
しかし、そこまでは長生社は戻れなかったんですよね。新しいスタート地点として、現実味のある最も確からしい初期状態が純米酒造りだと思えたんです。それからまた何年もかけて純米酒造りの技を磨いて、ようやく純米蔵の宣言をすることになったんです。
純米のみを造るっていう視点ばかりじゃなくて、地産地消だとか、まちづくりだとか、純米酒醸造の技術の研鑚とかも含めて、今から考えればいろいろあったアイディアの中の、最も遠回りと思われるような道を選んでしまったように思いますけどね(笑)。
そして、そんなこと長生社だけがやったってダメなんです。純米でなくたっていいんです。いろんな蔵元がいろんな道を模索して、新しい時代を創っていかなくてはなりません。もうこの業界は一社だけでは伸びていけないでしょう。信濃鶴が売れるようになるためには、日本酒が売れるようにならないとイカンのです。
□□□ 調子に乗って書き過ぎました □□□
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