専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

リセット(つづき)

一昨日、前振りが長過ぎて書ききれなくなっちまったブログの続きです(笑)。「日本酒のリセットボタンを押したら、どの初期状態に戻るんだろう」って、ずーっと考えていたっていう話でしたね。本当はコンピュータにしかリセットボタンなんてないんですけどね。

今の子供達は、現代技術を駆使したとってもリアルなゲームの世界にのめり込んで、うまくいかなくなるとリセットして最初からやり直します。これが現実世界でも通用するようなイメージを持ってしまうと怖いやねぇ。自分の人生は、たった一本の道しか進むことはできないのにね。私的に言うと、四次元の時空間のたった一本の曲線とでもなりましょうか(笑)。

人生にリセットはあり得ませんが、私もずーっと考えていた時期がありました。「この酒造業界をリセットするにはどーすりゃいいんだ」ってね。一体どこまで戻ればいいのか、どの段階を初期状態だと考えれば間違いがないのかってね。

既にどん詰まり状態の酒屋家業の未来が、このままの延長線上にあるとはとても思えませんでした。もう一度どこかの時点からかやり直して、これからこの酒造業界を発展させていくために、間違いのないスタート地点に立たなくてはなりません。

考え方とすると、後ろ向きに思われるかもしれません。日本酒の未来をどう描いて、それにどの様にアプローチしていくのかと考える方がポジティブな感じですもんね。しかし、温故知新のことわざにもあるように、あの時の私には今自分の立っている場所が、既にここなら大丈夫という位置からは外れてしまっているように思えて、なにか後ろを振り返らざるを得ない心持ちだったんだと思います。

何年間も考えていました。これなら間違いないはずだと思える考え方に至ったとしても、現状を鑑みて不可能だと断念してしまうばかりで、「こんな事真剣に考えても意味がないんだ、成り行き任せでも何とかなるさ」って自分を誤魔化していたような部分の方が多かったかもしれません。今考えても苦々しい日々でしたね。

それでも、やっぱりケツに火は点くもんです。「このままじゃ、絶対に絶対に絶対にダメだ!」と思うようになっていました。リセットしてどこまで戻るのか考えることには辟易していましたが、頭の中で何万回やったか分からないシミュレーションでボツになっていない部分をつなぎ合わせました。そして、「とりあえず純米酒からもう一度やり直そう」と思ったんです。そこからのスタートなら間違いないだろうと。

時代でいえば、戦前にもどろうってな感じでしょうか。もっと前に戻る考え方もあります。酵母の増殖のさせ方を、それなりの機関が作った優良酵母を添加するんじゃなくて、昔ながらの空気中の酵母を捕まえて増殖させるやり方にするとか、科学的な薬品を一切使わないようにするとか、有機無農薬のお米を使うとか・・・。

しかし、そこまでは長生社は戻れなかったんですよね。新しいスタート地点として、現実味のある最も確からしい初期状態が純米酒造りだと思えたんです。それからまた何年もかけて純米酒造りの技を磨いて、ようやく純米蔵の宣言をすることになったんです。

純米のみを造るっていう視点ばかりじゃなくて、地産地消だとか、まちづくりだとか、純米酒醸造の技術の研鑚とかも含めて、今から考えればいろいろあったアイディアの中の、最も遠回りと思われるような道を選んでしまったように思いますけどね(笑)。

そして、そんなこと長生社だけがやったってダメなんです。純米でなくたっていいんです。いろんな蔵元がいろんな道を模索して、新しい時代を創っていかなくてはなりません。もうこの業界は一社だけでは伸びていけないでしょう。信濃鶴が売れるようになるためには、日本酒が売れるようにならないとイカンのです。


□□□ 調子に乗って書き過ぎました □□□
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コメント

飲み手もリセット

私の周りでは日本酒の消費が低迷しているなんてのはにわかに信じられなくて、地道な純米酒普及活動(笑)で会社の同僚や取引先など日本酒ファンは確実に増えています。知れば好きになるのが日本酒だと思います。「日本酒は好きだけど保存の仕方や賞味期限がわからないから家ではビール」とか、「日本酒は辛口だからだめ」って人もいました。昔だったら身近な人が日本酒のことを教えてくれたのかも知れませんが、今は日本酒を飲む人が少ないから保存法法や分類など基本的な事も伝わらないのだと思います。
結構些細な理由で日本酒は避けられているんじゃないかなと思う今日この頃です。

  • 2007/09/30(日) 00:54:01 |
  • URL |
  • はら #wr80fq92
  • [ 編集 ]

酒屋をリセットしないと.....

何たって日本酒の楽しみ方を知らない酒屋が多いんだから、駄目だーねー。賞味期限は「美味しいと感じられなくまで」と平気で言えない酒屋は駄目だーねー。生酒は何があっても冷やして呑まなきゃいけないと思ってる酒屋は駄目だーねー。日本酒は利益を得る為の道具の一つだと思ってる酒屋は駄目だーねー。日本セーフは国を挙げて酒屋を教育して行かないと駄目だーねー。それぞれの蔵元はいい酒を造ろうと一生懸命なのにね.....

  • 2007/09/30(日) 01:47:17 |
  • URL |
  • と△こさんの東北地方の呑み友達 #-
  • [ 編集 ]

20年以上前でしょうか。ハワイに行って、スーパーで地場産日本酒に出遭う。味を見限っていたが、どっこい「野太ではあるが品位のある」酒質に驚愕。恐らく、出身者の多い「広島の戦前の酒」を設計図としたのだろう。日本酒を救うかに見えた「大吟醸」ブーム。逆に「作務衣おじさん跋扈の金儲け酒場」「プレミア清酒」で、思わぬ落とし穴。

吟醸オタクと立ち呑み好きの二律背反から吟醸オタクを卒業。15年ほど前から「ぬる燗純米」主義に切り替える。

地霊の酒から「縛りのない舌先の味」に嗜好が変わった3つのポイント。「越の寒梅」以降「上善如水」以降「十四代」以降。だんだん本来の日本酒にあった「風土の呪縛」から解き放たれる流れ。だからして全国区で売れる。

せめて「上善如水」以前にリセットしなければ、これだけ醸造技術も向上し、信じられないくらい「舌先では美味しい」最高の日本酒の時代なのに、日本酒のパイがしぼんでゆく不幸。

もう一度「若い女性や都会の男性」ターゲットじゃあなく地場の「酒飲みオイさん」に視点をあてた酒造りを考える時代ではないでしょうか。

  • 2007/09/30(日) 05:40:31 |
  • URL |
  • 立ち呑みHAKLUDO #qbIq4rIg
  • [ 編集 ]

>>飲み手もリセット

飲み手の皆さんが日本酒について知らないのは、やはり私たちの業界の責任もあると思います。
でも、何もやってこなかったわけじゃないんです。
いろいろなイベントもやって、啓蒙活動もしてきたんですが、ほとんど功を奏さないのが実情です。
傍から見れば、まどろっこしく見えるに違いありませんが、落ち目の業界ってこんなものなのかって悲しくなりました。
ですから、そういった対処療法ではなく思い切ったリセットに踏み切ったんです。
まだまだ道は遠いんですけどね・・・。

  • 2007/09/30(日) 08:22:15 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

>>酒屋をリセットしないと.....

酒屋さんとの協調、連携っていうのも大切ですよね。
しかし蔵元ともども元気がなくなってますから、打っても響かずという印象も強いです。
酒屋さんにもどえらくいい時代がありましたから、その時のままの気持ちで商売を続けていると苦しくなっちゃうでしょうね。
これは蔵元にとっても同じ事でしょう。
仙台にも元気な酒屋がいるように、伊那谷にも元気な酒屋がもっと出てきてもらって、この地域の地酒文化をいっしょに継承していきたいと思ってます。
どの酒屋さんも頑張ってるんですけどねぇ。
何やっても空振りなんですよね(涙)。

  • 2007/09/30(日) 08:36:13 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

>>HAKUDOUさん

吟醸オタクと立ち呑み好きの二律背反は、私は今でも背負ってますよ(笑)。
「ぬる燗純米」主義もいいですねぇ。
HAKUDOUさんのように、心から日本酒を愛してくれている消費者の方は、私達にとって本当にありがたいお客様です。
地酒には、全国区で売るために地元で造った酒と、本当に地元から出て行けない酒という2種類があると言う人もいます。
まずは地元があって、それを補うために都会へ出荷するくらいのつもりがいいと思いますし、多くの蔵元もそう言っています。
なかなかうまくはいきませんけどね(汗)。
私もターゲットを女性とか都会とかに絞るのは何かおかしな気がします。
あえて言うなら、地酒のターゲットは地元でしょう。

  • 2007/09/30(日) 09:00:23 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

う〜む…

ブログも難しければ、コメントも難しい…(涙。次元の話しよりは良いですけどね♪
日本酒のリセットは、お酒を扱っている人にしかわからないのかな〜?
消費者としたら、常に美味しいものを探しているわけで、リセットの位置づけが難しいような。。。純米酒が好きな人がいれば、甘党も辛党もいて。
私自身のリセットを考えると、大学時代はビールが飲めない自分がもどかしくて、冷蔵庫にビールを買い込み特訓したものです。しかし、どんなに頑張っても飲めるようにならず、でも付き合いで酒席はあるし…甘いお酒で紛らわしていたところ、出会ったのが日本酒。4つ上の先輩との出逢いが日本酒との出逢いでしょうか。相変わらず付き合い程度にしか飲めませんが、日本酒オンリーなのはリセットしても変わらないでしょうね(笑。

すばらしい蔵の方針見識に頭がさがります。
ずーっと長野大好きの私としては嬉しい蔵の方針です。

大坂の酒屋の立ち呑み。
本来「コップ酒」が基本なのに、日本酒を飲んでいるのは
約2割。淋しい限りです。
これでは「立ち飲み」です。「立ち呑み」でない。
安直金儲けの、椅子排除回転率向上。

心から愛し応援している、明日香の弱小蔵
脇元酒造。新大阪に直売「立ち呑み酒屋」を出していましたが
廃業。最高峰の大吟をほとんど原価で出していましたが
みんなビール。無念!。社長に「ビールは置かんといたら」と
忠告しましたが、なかなか。無理でした。

日本酒は「飲む日本精神」「飲む美しい古里」
がんばってください。ほんまもんの日本酒復権!

  • 2007/09/30(日) 11:55:18 |
  • URL |
  • 立ち呑みHAKLUDO #qbIq4rIg
  • [ 編集 ]

>>う〜む…

確かにその通りですよね。
飲み手は業界の事情なんかよりも、美味しい酒であればいいんですからね。
私もそう思います。
実際に売れているお酒は純米だから売れているわけじゃぁないし、ナントカ錦を使っているから売れているわけでもありません。
美味しいから売れてるんです。
より多くの人に美味しいと言ってもらえるお酒を造ることが先決だと思っています。
私は地元の美山錦で造った純米酒が美味しいと思っているので、そのスペックになっているわけです。

  • 2007/09/30(日) 15:47:56 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

>>HAKUDOUさん

今日本で消費されているアルコールのうちの日本酒の占める割合は、わずかに8%程度なんです。
100人のうちの8人しか日本酒を飲んでくれないんです。
普通の飲兵衛さんは、これといった注文もつけずに日本酒を注文して、それが不味ければやっぱり日本酒からは遠ざかってしまうと思います。
それも、文句ひとつ言わずに・・・。
ですから、当たり前に身の回りにいつでもある酒をいい物にしていかなくっちゃいけないと思いました。
まだまだ遠い道のりのような気がしますが、まずは一歩を踏み出さないとなんともなりません。
2、3歩歩いた程度でしょうか。

  • 2007/09/30(日) 15:59:47 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

ですねえ。酒屋の立ち呑みですら2割。
見識ある酒屋の立ち呑みは、
焼酎に高めの値付けをしている店もあります。
日本酒の復権は何としても必要です。
一度消えた文化は甦りません。

  • 2007/09/30(日) 18:17:32 |
  • URL |
  • 立ち呑みHAKLUDO #qbIq4rIg
  • [ 編集 ]

8%???

そうなんですか…。それは知りませんでした。
私は自分が呑むときはもちろん日本酒、人に勧めるときもムリヤリ(笑)日本酒なもので、確かに最近は焼酎を飲む方が増えて、つぐことが出来ない淋しさを感じていますが、そこまで少ないとは…。
かといって、飲み屋さんは売れ筋を下げるわけにはいかないですしね^^;

「立ち呑み」、こちらではそういった習慣がないですが、凄く興味がありますねぇ〜。でも、普段より早く酔っちゃいそう…?

何処までの先祖帰り

難しいですね、蕎麦屋も技術的な物は現代が進んでますが素朴な意味での味は損なわれてるかも知れません、昔は殻を剥かないでそのまま石臼で挽いてましたから黒くて太い蕎麦でしたが、江戸時代に殻を剥く技術が出来て更級や引きぐるみの蕎麦が出来たそうです、当時は蕎麦は蒸篭で蒸して食べたそうです、其処からせいろの名前の由来が来たそうですが、味は押して知るべきだそうで其れをお湯で茹でることでこしが出て冷たくても温めても食べれるようになりました、戻っても未完成の時に戻っても意味が有りません現在の良い技術と昔の素朴さがかみ合ってこそ良い日本酒が出切るのではと思います、利益も出さないといけませんが安易に利益を出そうとした時代では返って飲む人が減少するのでは無いですかね、協○発酵のアル添では個性が出ますかね、純米至上主義では有りませんが今は其れも大事な選択だと思います。

  • 2007/09/30(日) 20:39:12 |
  • URL |
  • 蕎麦屋のオヤジ #-
  • [ 編集 ]

>>HAKUDOUさん

日本酒の文化はどうしても消すわけにはいきません。
そのためにも、消費者の皆さんに大切な文化なんだと思っていただけるような酒を造らなくっちゃなりません。
皆さんのご意見も入れながら、造り手としての主張も生かされた酒造りを模索しています。
必死になって考えて、必死になって造って、その後は何も考えなくたっていいじゃないですか。
立ち呑みで美味しきゃいいじゃないですか。
疲れが癒えればいいじゃないですか。
楽しく話ができればいいじゃないですか。
理屈はかんけーないんですよね(笑)。

  • 2007/10/01(月) 17:18:45 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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>>8%???

日本酒なんてそんなもんなんですよ。
消費者心理がその程度ということは、宣伝方法や販路拡大といったことも、よく考えた方策をとらないと効率が悪くなっちゃいます。
isuzuさんみたいな人ばかりなら、こんな苦労はしてませんよ(笑)。
立ち呑みは関西の方が多いみたいですね。
東京だと有楽町のガード下みたいなところでしょうか。
HAKUDOUさんのブログを見て、いつか行きたいと思ってます(笑)。

  • 2007/10/01(月) 17:24:53 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

RE:飲み手もリセット

「日本酒ってウマイじゃないか」と多くの人が再認識できるような旨い酒が増えていますから、遠からず見直される日が来ると信じています。

>いろいろなイベントもやって、啓蒙活動もしてきたんですが、ほとんど功を奏さないのが実情です。

このブログもリセット済み?だから面白いんでしょうねぇ。

  • 2007/10/01(月) 17:26:17 |
  • URL |
  • はら #YF5N6jBQ
  • [ 編集 ]

>>何処までの先祖帰り

おっしゃること、よーく分かります。
どの辺まで戻るのかのさじ加減って言えばいいのか、落としどころは考えに考える必要があると思います。
かなり昔まで返っても、それはそれで意味のあることだと思いますが、未来に向かっての道程は遠すぎるものになっちゃうんじゃないかとも考えられますよね。
信濃鶴は純米からやってみようと思ってますが、そこがベストかどうかは自信はないんです。
昔のそばの話は興味深いですね。

  • 2007/10/01(月) 17:38:10 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

>>RE:飲み手もリセット

確かにうまい酒は増えていますよね。
量は売れないから、質に転換してきている証拠でしょう。
見直された時に、消費者の気持ちを裏切らない酒でいるべきだと思っています。
このブログもリセットした後のまっさらな気持ちで書いています。
それほど面白いかは別問題ですけどね(笑)。

  • 2007/10/01(月) 17:41:42 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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