先生が最も力を入れて研究している内容をひと言で言ってしまえば・・・本当は簡単には言えないんでしょうけど・・・心と遺伝子の関係ということになるようです。つまり、心の持ちようで遺伝子のスイッチが入ることがある、心を変えたら遺伝子の働きが変えられるといった内容と言えばいいでしょうかね。
遺伝子研究の大家ですから、科学的にその働きを説明することなんて朝飯前なんでしょうが、心とか、もっと言えば神様なんていうものを引っ張り出して、科学で分かっているものと等価に論じようとする事はやっぱり壮大な試みであって、とても一筋縄ではいかないんでしょうねぇ。だからこそ、そこに解釈する側の恣意が入る余地ってぇものがあって、面白いのかもしれませんけどね。
そして、研究を突き詰めていけばいくほど、「人間は遺伝子を解読する事はできるけれど、その遺伝子を書いたのはいったい誰なのか?」なんていう疑問がわいて、「人間は何か偉大なものによって生かされているんだ」という、かなり神々しい結論に至るわけです。村上先生はそれを『Something Great』と表現されてましたね。
でもね、アプローチの違いこそあれ、蔵の中で酒を造っていると、時々そんなこと考えますよ。私はそれほど頭は良くはないし、それほど神様を信じているわけでもないし、それほど高邁な思想の洗礼を受けているわけでもありませんが、感じるものは感じるんです。たぶん同じ様なもののことを言ってると思うんですけどねぇ。
結局人間なんて何にも分かっちゃいないんですよね。講演の中で出てきた話を引用すれば、生物の死というものははっきりと認識できるんだけれども、細胞1個だけを見たときにそれが死んでいるのか生きているのかの区別なんかつきゃしない。遺伝子の知識を使って大腸菌に別の細胞のコピーを大量に作らせる事はできても、その大元の細胞1個すら作り出す事はできません。
だから、そういうつもりで麹や酵母に接してりゃぁいいんじゃないですかねぇ。連中のことを科学的に分かったつもりになってても、それほど大した理解には到達していないような気がしますね。実際にそういう知識よりも、これまで千年以上にわたって私たちのご先祖様が試行錯誤してきた酒造りのやり方の方が確実なんだしね。
でも、今回の講演から得た知識で言えば、麹菌や酵母菌を育てていく時に彼らの「心」を変えてやることができれば、酒造りにとって革命的な、もっとスーパーな彼らの遺伝子のスイッチを入れられるかもしれません。そうなったら酒がバンバン造れて、左団扇で生きていけるようになるかなぁ・・・って、やっぱり人間なんて浅はかだぁね(涙)。
1億円の宝くじが100万回連続で当たるくらいの確率で、ようやく細胞1個が生まれるんだそうですよ。その細胞が何兆も集まって有機的に作用し合ってんだから、それほど生命体というものは「在り難い」存在であって、「ありがたい」と思って生きなくっちゃいけませんよ・・・というお話(笑)。
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