専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

初酒母

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こうなったら意地でも『初物』シリーズいっときます(笑)。今期初めて造った麹が投入されるのが、今季初めて仕込む酒母ってことになります。『酒母(しゅぼ)』っていうのは、お酒の本仕込のスタートで使われる、発酵の出発点となる酵母の原液みたいなものです。『酛(もと)』とも言われますが、この漢字がパソコンでは簡単に出て来ないもんだから『酒母』の方で統一しておきますね(笑)。

酒母は本仕込と同様に、水と蒸米と麹を投入して仕込みます。本仕込と大きく違うのは酵母を添加するかどうかでしょうね。酒母は仕込全体からみればほんの数%の量でしかありませんが、私達が購入する酵母菌はもっともっと少ない数百cc程度のものなので、その酵母菌をある程度の量になるまで拡大培養したものが酒母ってことになります。

万が一ここで雑菌でも入り込んだりしたら、酵母菌を培養してるんだか雑菌を培養してるんだか分からなくなって、それをそのまま本仕込に使ったら『腐造(ふぞう)』と呼ばれる変調もろみになってしまいます。私の周りでそんなもろみになったなんていう話は聞いたことはありませんが、全国規模では毎年そうした事故もあるみたいですから、出発点から汚染されるようなことがないようにとても気を使いますね。

酒母に求められる一番大きな役割は、とにかく元気な酵母菌をたくさん培養するっていうことでしょう。菌の数が少なかったり、数が多くても元気のないような菌だったりした場合には例え雑菌の汚染がなかったにしても、健全なもろみに誘うことはできませんから、やっぱりやっぱり気を使うことが多い酒母の仕込なわけです。

っていうことで、水と蒸米と麹を使うのは本仕込と同じだとしても、酒母の場合には酵母菌を元気に育てることが目的だし、本仕込の場合には味のいいお酒に仕上げることが目的ってことになりますかね。ですから、本仕込と比べると量もさることながら、麹の比率や温度経過の流れもかなり違うんですよ。

蔵の中には酒母室と呼ばれる酒母を育てる専用の部屋があるんですけど、長生社の場合にはその部屋は温度管理ができないもんだから、造り始めの何本かだけはデッカイ冷蔵庫の中で造ります。気温が低い中で造るのが基本ですから、まだまだ今くらいの気温だと暖か過ぎて上手くいかないんですよね。そのために、冷蔵庫を少し広めに作ってるくらいです。

とりあえず今のところは、何も問題なく酒母は育ってくれています。毎日分析をしておかしなところがないかチェックはしていきますが、それよりも日々面倒を見る中でいつもと違ったことがないかどうか自分の五感で確かめることの方が大事なのかもしれません。そういう眼力は経験によってのみ養われますから、長年お酒造りに携わっている杜氏さん達には敵わないわけです。

酒母をあんまり舐めると酸が高いから歯が溶けるなんていう怖い話も聞きますが、分析用に採取したサンプルを口に含んで味を確かめるのも大切な仕事です。その味を言葉で表現するのは難しいですけど、「あれ?いつもと違うなぁ」なんていう感覚は、そんな実際の五感のみから触発されると思うんですけどね。アルコール度数は低いしかなり甘いですから、できそこないの冷たい甘酒って感じで案外美味しいもんですよ(笑)。


□□□ 初酒母なんてぇ言葉はありません(汗) □□□
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コメント

真骨頂

そんな、無理やり初物シリーズにしなくても。(笑)
でも、こうして日々進められていく酒造りの過程を追えるのは、
読者としては興味深くて楽しみです。
もちろん脱線ブログを読むのも楽しいですけど、
こういう記事が、このブログの真骨頂なんだと思います!(^^)

  • 2013/11/03(日) 15:05:50 |
  • URL |
  • まっちー #-
  • [ 編集 ]

Re: 真骨頂

初物シリーズにどうしてもしたくなって、スイマセン(笑)。
これがストーンヘッドのストーンヘッドたる所以なんでしょう(汗)。
でも、興味を持って読んでもらえるんなら頑張りますね。
こういうことを読者のみなさんが望んでおられる部分が大きいでしょうしね。
まぁ、毎年のことで飽きちゃうかもしれませんが・・・。

  • 2013/11/04(月) 23:39:33 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

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