専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

農業試験場(つづき)

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日本酒というお米を原料とした製品を造っているんだから、当然お米については詳しいはずだと思われているだろうことは想像に難くないわけですが、実はあんまりよくは知らないんですよね、これが(汗)。蔵元としては実に勉強不足なんですが、大まかな流れは知識としてあっても、それ程奥深く理解できてるわけじゃないんですよね。

さて、この日の私達の一番の目的は、新しく交配・育種されている将来の長野県清酒を背負って立つべき新しい酒米についての状況を教えていただくことでした。長野県で作付けされている酒米としては、美山錦、ひとごこちなんかが有名ですが、最近は金紋錦(きんもんにしき)なんていうのも栽培面積が増えているみたいですね。

この農業試験場では、その後継候補としての新しい品種がいろいろと育種されているんですけど、その中のどれが有望なのか、形状や成分面はもちろんのこと、栽培方法や収穫量なんかも含めて研究されています。いろいろと交配をさせてみて、その中から候補を選別していくっていう方法だそうです。

稲っていうのはとても安定した作物なんだそうです。どういう意味かって言うと、自分で花を咲かせたらその花の中で受粉が行われる自家受粉で、他の稲の花粉が飛んできて交配するっていうことがほとんどないんだそうです。で、同じ遺伝子が脈々と受け継がれていくタイプの作物だってことらしいですね。

ところが、毎年同じ米質の米を造り続けるにはいいその性質も、新しい品種を生み出そうと別の品種の稲と交配させようとすると、逆にやり難いってことになるわけで、稲の交配にはひとつのテクニックがあるんだそうです。農業試験場にはそのための部屋がわざわざあるくらいで、そこでのやり方を教えていただきました。

稲の花の中には当然おしべとめしべがあるわけですが、おしべの出す花粉はとても熱に弱いんだそうです。なので、43度くらいのお湯に稲の穂の部分全体を数分間漬けておくと、花粉だけが死滅して自家受粉ができなくなります。その処理を施した稲の花が咲いた時に、他の品種の稲のおしべの花粉を受粉させれば交配ができるっていう算段です。

稲の花はある日の午前中1回だけ、それも2時間くらいしか咲かないんだそうです。ですから、受粉のタイミングを計るのは難しいそうです。ただ、田んぼの稲全てが一斉に咲くわけじゃないので、咲いているもをの採ってくるようにすればいいみたいですけどね。いずれにしても、全ては地道な作業によってなされてるんだってことがよく分かりましたよ。

写真は、その交配作業が終わった稲の図です。このまま数週間、水耕栽培のようにして育てておくとちゃんと実って、それが新しい品種の候補の種になるわけです。その中から、優秀な酒米が発見されることが私達『酒米研究会』の大いなる望みなんですけど・・・この研究会については、明日もうちょっとお話ししましょう。


□□□ 結構なシリーズになっちゃいました □□□
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コメント

美味しい日本酒に良い米は欠かせない

ワイン造りと日本酒造りの一番大きな違いは、
ワインが「ぶどうの収穫時点でその品質の半分以上が決まっている」とされるのに対し、ワインと比べると醸造工程の長い日本酒は、原料の米の影響は少ないとされてきました。
それでも、良い酒米を使えば良い酒ができることは江戸時代から知られており、主産地の灘では良い米を安定的に確保するため、明治時代の中ごろから「村米制度」と称して、酒造家と米の生産者の強いつながりを創り上げてきました。
ところが、戦後この制度は崩壊したのです。
原因はいろいろありますが、僕はその一番を、戦中戦後に始まった「大量のアルコール添加」にあると思っています。
大量のアルコールを添加して、米だけで造る量の、2倍にも3倍(三倍増醸)にも薄めるのですから、本来の日本酒造りに求められた、複雑で緻密な後術は捨てさられ、コストと効率一辺倒の酒造りからは、米の良否などは問題にもならなかったのです。
その結果が現在の日本酒の惨めな姿です。

しかし、20年ほど前から純米酒造りに取り組む蔵元が増えてきました。
純米酒造りではその工程で少しでも手を抜くと、それがそのまま酒の品質に現れます。そして当然ではありますが、原料の米の良否がそのまま酒の品質として現れることから、良い米の確保は必須条件です。
平成時代になると、全国の道府県で次々と新しい米が開発されるようになり、平成23年7月現在、山田錦、美山錦など96種もが酒造好適米に指定されているのは、酒米の重要性が見直されてきた現われだと思います。

米の生産者と酒蔵が共同して目指す品質の米を作り、酒蔵がその米を使って、精魂を込めたその蔵独自の酒を造る様になった時、日本酒はもっともっと美味しく、世界に誇れる酒になっているはずです。

先進して純米酒にこだわられる岳志さんの責任は大きくなりますが、益々ご精進されることを、心から期待をしています。

ガッツポーズ

今回の勉強会では随分と真面目に勉強してきた様子のレポートです。(笑)
自家受粉や交配の工夫など「へぇ~」的な発見がありました。
ワンチャンスを狙い、いくつもの種類を掛け合わせて
目指す品質のお米を生み出していくのは大変な努力の賜物ですよね。
お酒造りもそうですし、何事にも地道な苦労は付き物なんだなぁ~と、
改めて思いました。
ここで研究している職員の人たちも、思い通りのお米ができたときには、
「やった~!」とガッツポーズをするんでしょうね!(^^)

  • 2013/08/23(金) 12:36:49 |
  • URL |
  • まっちー #-
  • [ 編集 ]

酒米

この試験場で新しい酒米ができて、それが駒ヶ根で栽培されたら、信濃鶴でも新しい酒米を採用することになるんですよね?

というか、それくらいのことがなければ、信濃鶴では新しい酒米を採用しなさそうな…(笑)

  • 2013/08/23(金) 16:15:33 |
  • URL |
  • ZEN #USldnCAg
  • [ 編集 ]

凄く参考になります

酒ひろし氏の投稿は。
宮城の寒梅酒造さんの蔵回りは全て田。自家米を家族と蔵人で
栽培していました。農作業の姿を見ていると酒の原点のような光景
に変化してくるのです。
遅れました 岳志さんの文も大変参考になっていますから。

  • 2013/08/23(金) 17:15:33 |
  • URL |
  • 泉山 #-
  • [ 編集 ]

Re: 美味しい日本酒に良い米は欠かせない

ワインに対するブドウ品質の重要性が、日本酒に対する麹の重要性と同義なんだと思います。
そして、それ以前に酒米の品質が重要であることは論を待たないでしょうね。
アル添によってその認識が薄らいだっていうのは実に酒ひろしさんらしい論点です。
でも、そうじゃないとは誰も言い切れないでしょうし、私も純米を造り続けて思い当たる節が多分にありますね。
きっと、酒ひろしさんの見方は正しいと思います。
たぶんどのお蔵さんもそういうことに気付いているはずですから、これから日本酒は更に美味しくなっていくんじゃないでしょうかね。

  • 2013/08/23(金) 18:08:46 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

Re: ガッツポーズ

私はいつでも一生懸命に真面目に勉強してるんですからね(笑)。
他にもいろいろと面白い話を聞かせていただいたんですけど、かなり忘れました(汗)。
膨大な作業の中からたった一つの品種に絞るんですから大変な仕事ですよね。
それが必ずしも成功するとも限りませんしね。
みんなでガッツポーズができるような酒米を造りたいもんです!

  • 2013/08/23(金) 18:11:22 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

Re: 酒米

もしも、この試行の中からいいものができれば美山錦は淘汰されるかもしれません。
そしたら、地元でもそちらの品種が栽培されるでしょうね。
そしたら、私もそれを使わざるを得ません。
そしたら、ZENさんも喜んでくれるかもしれません(笑)。
まぁいずれにしても、実際に作付されるまでにはあと数年はかかるでしょうね。

  • 2013/08/23(金) 18:13:43 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

Re: 凄く参考になります

凄く参考になりますか・・・酒ひろしさんのコメントは・・・(笑)。
私なんかよりは知識も経験もお持ちですから当然と言えば当然なんですけどね。
でも、ここまで論理的にしっかりと物の言える人はそうはいないと思いますね。
蔵で使う酒米を自分で作るなんてこれ以上ない羨ましい環境です。
私もやってみたいとは思いますが、田んぼがなくっちゃできませんしねぇ(汗)。

  • 2013/08/23(金) 18:17:28 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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