専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

曾爺さんの教え(その5)

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その日も、曾爺さんのご機嫌伺いに、家族中で本宅に出向いていました。この日のお説教も終わり、私達子供はワイワイと飛び回って遊び始めました。そして、何の拍子だったのか、よくある展開だったと思うんですけど、私と上の妹のいざこざがケンカに発展したんです。腹を立てた私は、妹を殴って泣かせちゃったんですよね。

それを見ていた曾爺さんは、「岳志、そこへ座れ」と一言。コイツは怒られるに違いないと神妙にして、私は曾爺さんの前に正座させられました。今となっては思い出しようもありませんが、あたりの空気もいきなり張り詰めてたと思います。ああいう威厳っていうのは、今のお年寄りや学校の先生には、あまり感じられなくなりましたねぇ。

「お前は今何をした?寄りに寄って、自分の大切な妹を殴るとはどういう了見だ。自分よりも小さくて女の子でもある妹を、敵うはずのない力でねじ伏せて痛い目に合わせるとは、到底男のする所業ではない。そんな肝っ玉の小さいことでどうする。なんでそんなことをしたのか、説明できるのならしてみろ」

「お前は、妹が思い通りに言うことを聞かないことに腹を立てた。そして、それを力で解決しようとした。そんなやり方は世の中では通用せん。そもそも、他愛もないことに簡単に腹を立てるお前の度量は小さ過ぎる。そんなことでこのまま大きくなって、立派な大人になれると思ったら大間違いだぞ」

「男児の怒りは公憤たれ、復唱しろ」・・・「ダンジノイカリハコウフンタレ」・・・「いいか、これはな、男児たるもの枝葉末節に気をとられることなく、腹を立てるのならば大局に立った怒り方をしろという教えだ。お前の今の怒り方はとてもそうはなっていないし、それを暴力に訴えるという浅はかさ加減だ。これでは、先が思いやられる」

こん時はしっかりと怒られましたねぇ。家ではいつもやってることなもんだから、何の気なしに本宅でも披露しちゃったわけです。「喧嘩両成敗じゃないのかよ」という理屈も頭をよぎりましたが、この時の曾爺さんにはそんな小賢しい反論を聞き入れてくれそうな気配は微塵もありませんでしたね。200%自分が悪かったんだと叩きこまれました。

「ダンジノイカリハコウフンタレ」が「男児の怒りは『興奮』たれ」じゃないことは何となく分かりましたが、当時の私には『公憤』の意味するところは理解できてませんでしたね。でも、このフレーズはずーっと私の脳裏にこびりついていて、もう少し大人に近づいたある時、スッと胸に落ちる瞬間があったんです。それ以来、忘れることのできない曾爺さんからの教えになっています。

本当は泣いたふりをしていたのかもしれない妹が、ざまぁ見ろとばかりに曾爺さんの後ろから私にアッカンベーをしていたかどうかは定かではありません。でも、その日ばかりは、家に帰って腹いせの復讐をする気にはなりませんでしたねぇ。いや、もしかしたら、あの日以来、私は今のように滅多なことでは怒らない温厚ないいヤツになったのかもしれません(笑)。


□□□ このシリーズはもうちょっと続きます □□□
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コメント

思えば今や
こんな威厳をもった大人
みなくなりましたね・・・・
今の爺さん婆さんたちは
孫やひ孫が可愛くて甘やかして~ですもんね

  • 2013/03/06(水) 12:05:27 |
  • URL |
  • hisami #-
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情けない

いやぁ~、その時々の状況に応じて、こんなに理路整然と説教できる大人なんて、
今は何人いることやら...(>_<)
男の怒りは公憤たれ!なんて、素晴らしい言葉ですね。
もちろんボクは「公憤」なんて言葉も知りませんでしたが...(^^ゞ

思い出すと、子供の頃の爺さんも怖かったし、親父も怖かったですよ。
本当に威厳があったものなぁ~。
こんなに大人に威厳がなくなったのは、いつの頃からなんでしょうかね。
自分もそうだから、世の中のせいにばかりはしていられないです。

  • 2013/03/06(水) 12:33:28 |
  • URL |
  • まっちー #-
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怖い大人

絶滅危惧種ですよね(笑)

私達が子供の頃、大人って怖い生き物でした。
前に行くだけで萎縮するし、緊張したもんです。

それというのも、岳志さんのお爺さんみたいに、威厳のある人がいなくなったからなんでしょうね。

しかし、もうイイオトナな自分を見ても威厳があるとも思えず…(涙)

  • 2013/03/06(水) 12:58:22 |
  • URL |
  • ZEN #USldnCAg
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Re: タイトルなし

昔のことばかり懐かしんでもいけないでしょうけどね(汗)。
子供の時にはうっとうしかった人物が、実は大切だったなんて今頃気が付くんだもんねぇ。
そういう人を見かけなくなったから余計にそう思うのかもしれませんね。
可愛いからって甘やかすばかりじゃいけません。
私はそういう年寄りにはならないようにします(笑)。

  • 2013/03/06(水) 18:43:01 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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Re: 情けない

のがしちゃいけない機会をしっかりととらえてましたよね。
その時に間髪をいれずに怒られるっていうことは大切なことかもしれません。
ずーっと心に残りますもんね。
自分のことを考えてみると、怒らなくっちゃいけない時に怒れてませんよね(汗)。
娘の反論の方が怖かったりしてね(涙)。

  • 2013/03/06(水) 18:45:38 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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Re: 怖い大人

確かに、大人ってとっても怖い存在でしたよね。
その分頼りがいもあるっていうかね。
時代の変遷で、大人のあり方も変わってきているのかもしれません。
怖いと思われたくない大人が多いのかな。
私も威厳のない大人ですから、人のことなんて言ってられませんよ(汗)。

  • 2013/03/06(水) 18:47:38 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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なまこ壁

立派なお倉ですね。左に写っている黒地に白の漆喰は我がふるさと伊豆ではお大様(金持ち)の象徴で「なまこ壁」って言っています。漆喰の盛り上がりが大きいほど「わし金持っとるでえ」を主張している証拠でした。扉も重厚でさぞ大事な品物が入っていたと想像しますが壁がはがれてこまいむき出しは淋しい気持ちがしますね。漆喰を使った鏝絵の代表作は日光東照宮の左甚五郎作の「眠り猫」ですが伊豆松崎町の「いずの長八」と言う人物も鏝絵の名人として有名です。

Re: なまこ壁

鳥居さん、いろんな雑学をお持ちですね(笑)。
こちらでも『なまこ壁』って言いますよ。
この蔵はどうやらお宝が入ってたんじゃなくって、麹室だったのかもしれません。
ただ、こんな場所にあるのはちょっとおかしいって感じなんですけど・・・。
この蔵も取り壊されちゃったんですよ。

  • 2013/03/07(木) 00:21:57 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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