専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

教え

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今年の夏は、結局、酷暑とまではいかないまでも、いつまでも暑い日が続いた猛暑になりましたね。昨日に引き続き駒ケ根の空の写真ですが、今日のものはひと月ほど前の、これから夕立が来るっていう直前の様子です。青空は残っているものの、この後どんどんと薄暗くなって、気持ちのいいお湿りの雨が降りました。

私が、昔会社にいた大先輩の年寄り社員に聞いた話ですが、「宝剣と高鳥谷(たかずや)のてっぺんが雲でつながったら夕立になる」ってよく言ってました。この写真のロケーションで言うと、左の方角に中央アルプスの宝剣岳、右斜め前に高鳥谷山があるんですけど、その教えは今でも私の頭の中に残っています。

単純に考えれば、私達の住む伊那谷の上が雲で覆われた状態だっていうことですから、「そりゃ当然雨も降るわな」って言っちゃえばそれまでのことなんですけど、その信憑性の真偽よりも、そういう見方で外界の様子を察知する昔の人たちの知恵には、大いに見習うべき点があるんじゃないかと思ってるんですよね。

現に、私がいつもそういうつもりで空を見上げて観察していると、雲が宝剣の方から流れて来て、どんどんと空を覆い、高鳥谷の山頂が雲で隠れるくらいになると雨が降り始めるんですよね。確実にそうなるっていうわけじゃないんですけど、大雑把な捉え方としてそんなに間違っていないことも確かです。

「雲があそこまで広がっていったから、そろそろ雨が降り始めるぞ」っていう情報がどの程度重要なのかは、置かれた状況によって異なるはずですが、田んぼや畑で仕事をしていることが多かった時代にはそれなりの意味があったんでしょうね。ある程度の必要性があったら、誰にとっても分かりやすい具体例になぞらえて、それを検証しながら語り継いでいったんだと思います。

こういう先人からの教えは、蔵の中にも当然たくさんあります。というか、そういう経験則の塊が酒造りだと言っても過言ではありません。そして、それは一般的にどの蔵にでも言えることもあれば、その蔵の持っているクセから来るその蔵ならではの教えもあって、最終的な微調整は後者によってなされることが多いわけです。

例えば、私の師匠である長生社の前杜氏が、「雨や雪が降ったら、麹室の天井窓を3センチ余計に開けるんだ」と教えてくれましたが、そんなことは他の酒蔵に行ったら全く違う行動になるはずです。それに、今の私だったら、『3センチ』の部分は『いつもより大きめに』っていう曖昧な表現になっちゃうと思います。

そういうことは、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)じゃないと教えてもらえなくて、後でどこかでまとめて聞こうなんてことは不可能なもんだから、今から考えれば、そういったこの蔵のみで通用するノウハウをかなり聞き逃したんじゃないかと、後悔することしきりなんです。そんな思いもあって、せっかく私が受け継いだ教えをしっかりと跡継ぎ達に伝えていくことも、これからの私の重要な仕事になると思ってるんですけどね。


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コメント

昔の教え

こういうのって、チョット前までは「非科学的」なんて言われたものですが、もっと科学が進んでくると「実は本当だった」みたいなことが結構あって、先人の知恵の深さを思い知らされます。経験知ってのはスゴイですよね。
日本酒でよく言われるのが、パスツールが微生物を発見するはるか前に、微生物を利用することと、その殺菌処理(火入れ)の技術が確立していたことですよね。なんといっても、火入れなんて、ロクに温度が計れない時代に70度という絶妙な温度での殺菌処理が発見されていたわけですからビックリです(笑)

なんにせよ、その先人の知恵があって、美味しい日本酒が飲めるわけですから、本当に感謝感謝です。

  • 2012/10/04(木) 07:27:04 |
  • URL |
  • ZEN #USldnCAg
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Re: 昔の教え

相当な試行錯誤の上に酒造りは成り立っているんですよね。
現代の科学でようやくその理屈が説明できるくらいの内容をやってのけてたんですもんね。
先人たちの努力には感謝するしかありません。
科学が発達していなかった昔の方が、第六感的に理解できてたのかもなんて思います。
そういう感度が低くなっちゃっている私たちはどーすりゃいいんでしょうねぇ・・・。

  • 2012/10/04(木) 08:24:35 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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先人の知恵や言い伝え~
成程!と納得いくものも多いですよね~
人の知恵って凄いよね☆

  • 2012/10/04(木) 09:52:49 |
  • URL |
  • hisami #-
  • [ 編集 ]

脈々と

酒造りは毎年、米質も気候も変わって、半分は自然相手のものだから、
その時々の状況判断が重要になりますよね!
マニアルに無い判断が求められるから、先人から引き継がれた教えに頼ることが多いと思います。
その上に自分の経験による知識もプラスされて、後に引き継いでいくんですね!
センサーやコンピュータが発達した分、それに頼って、
人間の感度が退化していくのは抗いようが無いことなのかも。

  • 2012/10/04(木) 12:35:25 |
  • URL |
  • まっちー #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

先人の知恵に守られてる部分ってあると思うんです。
何気ない知識でも、自分で発見しようとしたら大変なことでしょうね。
何となく自分の知識みたいになっていても、それはいい伝えられたことだったりするかも。
そんな言い伝えを自分でも作ってみたいと思いますね(笑)。
それが当たっているかどうかは、後世の人が確認してくれればいいってことで・・・。

  • 2012/10/04(木) 17:48:25 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

Re: 脈々と

自然を相手にする商売は、その年によって本当に千変万化でしょうね。
でもまぁ、それが面白いって言えば面白いんですけどね(笑)。
その辺を柔軟に対応できるようになったら達人の域に近づけるんでしょう。
そういう時に昔からの教えが強力な武器になってくれるんだと思います。
現代の科学に頼らずに、自分の感覚を使うっていうことがそこで大切になるのかもしれません。

  • 2012/10/04(木) 17:51:53 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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