専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

墓参り(つづき)

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奥さんが現在暮らしているのは、陸前高田市の隣の大船渡市の高台に建てられた仮設住宅でした。彼女にとって救いと言えるのは、自分のご両親がご無事で、現在の住宅のそばにお住いだっていうことでしょうか。それでも、ご両親のお宅も1階部分は全て浸水するくらいだったそうですから、相当な被害ではあったようです。

私の友人の遺骨はまだ彼女の仮設住宅にいて、そこでようやくヤツと再開ができました。ありし日の遺影が、まだそれを現実として受け止めていいのかどうか私を悩ませるような顔つきでこちらを眺めていました。そこが狭い仮設住宅の片隅だっていうことも、悲しさの行き先が見えない落ち着かなさを演出しているようでしたね。

彼女にとって、私に話すことは全て悲しみの総復習になっているわけで、何を話しても切なくて、私には到底彼女を慰めるなんていうことはできませんでしたが、大学時代の友人っていう間柄だから話せることもあったでしょうし、これまで胸につかえていたことのほんの少しでも吐き出してもらえたとしたら、それで良かったんですけどね。

あんな風にあまり考えもしないような状況で突然いなくなってしまうと、その人に対する気持ちはとても大きく残るのかもしれません。彼女の言葉からは、彼が優しい男だったっていう思い出と、亡くなり際に苦しい思いをしたんじゃないかっていう思いやりばかりがほとばしって、彼女の気持ちがまだあの日のままだっていうことをうかがわせていました。

発見された遺体は顔の部分しか見せてもらえなかったそうです。顔はきれいに残っていたんだけど、ズボンには血が付いていて、痛い思いを、怖い思いをしたんじゃないかといつまでも考えてしまうとか。優しかった彼が恐怖の中で亡くなって、それを物語る光景はまだそのまま残っている。彼女に本当の笑顔が戻るのは、いつになるんでしょうか。

全ては流されてしまって何も残ってはいませんが、数少ない遺品がヤツが身に着けていた腕時計でした。どっぷりと水に浸かっていたわけですからもう動かないものだと思ったそうですが、防水型だったらしくて、今でも動いてました。それを手に取ると、何となく彼の人懐っこい笑顔に会えた気がして、もう何も言えませんでしたね。

あまり時計をしない奥さんの誕生日プレゼントのために、ヤツがネットでこっそりと注文してあった女性用の腕時計。震災のあった数日後に届けられる予定でした。その後の大混乱で配達先が分からなくなっていたようですが、数ヵ月後に業者の方が奥さんを見つけ出して届けてくれたんだそうです。天国からの贈り物とヤツの形見は、今も一緒に時を刻んでいます。

今回の東北営業は、とにかく私にとってウルトラヘビーな旅になりました。私には何もできませんし、分かったようなことも言えません。この現実をどう受け止めて、これからどうしていけばいいのかも見当が付きませんが、東北のために一生懸命にお酒を造ろうとだけは思いました。確実に涙腺がダメージを受ちゃって、夕日を見ただけで泣けるようになっちゃいましたが、残りの東北レポートブログは悲しくないように書きますね。


□□□ いろいろ盛りだくさんの営業でした □□□
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コメント

放射能事故の被害に遭ったNさん、津波で店と家を奪われたOさんを訪ね、
そして津波に命を奪われた友人のお墓参りと、
精神的にヘビー過ぎる東北営業でしたね。
震災の数ヵ月後に奥さんに届けられた誕生日プレゼントの腕時計も、
余計に悲しみを呼び戻すものになったような...。
被災した皆さんの生活が早く元に戻るように、
傷ついた心が一日も早く癒されるように、願わずにはいられません。

  • 2012/09/16(日) 12:16:52 |
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  • まっちー #-
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うーん

比較の対象にはなりえないと思いますが甲府にあるライブハウスをホームとしていたNOBと言うバンドがありました。ベースをやっていたカマタって奴が息子と歳が一緒で妙に気があっていて浜松でライブをやった時鳥居家に宿泊することになっていてライブ会場で本人と話をしたらスタッフが翌日早い時間にバイトがあるから今日は帰りますって話になって次来た時は絶対俺んとこ来いよ!でさよならしました。二年くらいしたらcolorsってCDを出してオリコンのランキング一桁までいったんですけどツアーの移動中に高速道路でパンク修理中のバスに激突してカマタは帰らぬ人になってしまいました。ツアーの日記をHPに書いていたので速攻プリントアウトしましたが。数日でHPが閉鎖されていました。半年くらい経過した時にカマタのお父さんから連絡があり私の手元にも無い息子のツアー日記を鳥居さんが持っていると聞いたので是非送っていただけないでしょうかとの内容でした。もちろん送らせていただきましたがいわゆる「無機質の物」にも心があるって気がつかされた瞬間でした。

Re: タイトルなし

夜はしっかりと飲めた営業だったんですけどね・・・。
やっぱり楽しいばかりっていうわけにはいきませんでした。
それでも、こんな経験はなかなかできませんから、いい人生勉強になりました。
腕時計は、悲しみも希望も表わしている気がして、何とも言いようがありませんね。
今度は気晴らしに駒ケ根に遊びに来てほしいものだと思います。

  • 2012/09/17(月) 07:59:36 |
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  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

Re: うーん

それは、とても珍しい経験でしたね。
『無機質の物』の心を実感できるなんてそうそうないでしょう。
今の若者にとっては、ちょっと状況は違うのかもしれませんけどね。
その親御さんも改めてその形見(?)の重さに気がついたんじゃないですかね。
形にすればただの紙切れでしょうけど、中身に意味があるんですもんね。
それに人生の最後半が綴られているとなれば、なおさらその重さが違います。

  • 2012/09/17(月) 08:16:28 |
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  • 岳志 #-
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