専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

講話会

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先日、県の醸造研究機関が主催の研究会の際に、県内の杜氏さんの講話会がありました。私たち蔵元や蔵人にとって、ひとりの杜氏さんのお話をしっかりと聞く機会ってあんまりないんですよね。どんな内容になるかは分かりませんでしたが、こりゃいいチャンスだと、私も聞く気満々で出かけてきました。

講師になったのはK酒造のI杜氏さん。各種の品評会では常に好成績で、誰が利いても群を抜いて素晴らしい酒質を造り上げておられる、長野県きっての名杜氏と言っていいでしょう。味、香り、バランス、ふくらみ等々、全てが整ったお酒を非常に安定的に醸されていて、私も毎年毎年その出来に驚かされるところです。

県の杜氏会長もなさっておられるI杜氏さんを師と仰ぐ関係者も多くて、蔵に尋ねて行ってお話を聞いたとか、自分の蔵まで来てもらって指導を受けたなんていう話はそこらじゅうで聞きますね。熟練のその容姿や語り口からも、ベテランの域に達した杜氏さんの自信が感じられて、頼りがいがある感がたっぷりの先輩と言ったところでしょうか。

正直を言えば、技術的なお話を聞けるかなっていうつもりだったんですけど、それよりも杜氏としての歴史や時代背景についての内容が多かったですね。聴講者を見回すと、私なんかもう年齢的には上の方で若い蔵人たちが多かったですから、そういう話の方が今後のためになるかなっていう気はしましたけどね。

私が会社に入って蔵の仕事をするようになった時の先代の杜氏は、I杜氏さんより少し上の年齢でしたが、同じような時代背景の中で杜氏の経験を積んできていましたから、その手の話の内容はほとんど一緒だったんですよね(笑)。私も、先代杜氏に聞いて忘れかけていた、昔の蔵の厳しい様子を思い出させてもらいました。

かつて、先代杜氏と私が蔵に泊まり込んで仕事をしていた頃には、午後の仕事が終わって夕食を食べながらの一杯が進んでくると、よく昔の仕事の大変さを半分説教交じりに聞かされたもんです。話に聞いただけで、私達の世代は後世にはその内容は伝えていけないと思いますから、今のうちに若い連中にそういう話を聞いておいてもらうことには意味があるんじゃないですかね。

後半は技術的な話にもなりましたが、毎年安定した酒質を達成しておられるだけに、やっぱり数値的にもしっかりと押さえるところは押さえているんだっていう内容でしたね。まぁ、私程度の技術じゃ太刀打ちできない、長年の経験の蓄積による微妙なさじ加減までは、とてもとてもこういう場じゃ教わることはできませんけどね。

40年以上の杜氏歴を持つ人は、だんだんと少なくなってるんじゃないかな。現代では大学進学が当たり前になっていますし、高校を中退して丁稚奉公で蔵にやらされたなんていう経歴はあり得ない。それだけに、「昔は怒られて仕事を覚えたのが、今は褒めないと覚えてもらえない」なんていうボヤキも出るんだと思います。「厳しさの中でしか技は身に付かない」っていう言葉が、今回の一番の収穫でしたかね。


□□□ ブログを書くのも厳しいもんです(笑) □□□
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コメント

昔の話

蔵に伺うと、その手のお話をしていただけることもあって、昔は本当に大変だったんだなぁと思わされますね。

そういえば、昔は蔵の中が女人禁制だったんですよね。
今でこそ女性杜氏って珍しくなくなりましたが、昔では考えられないことで…

とはいえ、機会化されて多少は楽になっても、酒造りの大変さは変わらないと思います。
そういう思いをして造ってくださる方々がいるおかげで、こうやって日本酒を楽しめるわけですから、本当にありがたいです。

岳志さんも、どうぞ体に気をつけて、いつまでも美味しい信濃鶴をよろしくおねがいしますね(笑)

  • 2012/09/04(火) 07:11:30 |
  • URL |
  • ZEN #USldnCAg
  • [ 編集 ]

Re: 昔の話

はい、いつまでも美味しい信濃鶴を造り続ける所存です(笑)。
昔の、機械もない、寒い中での作業はとても辛いものがあったと思います。
私たちにはできないだろうっていう仕事の話はよく聞きますもんね。
でも、一方で人手としては非常に豊富にあったっていう部分もあります。
今の蔵の中では、とにかく最少人数で酒造りをしなくっちゃならないのが大変です。

  • 2012/09/04(火) 07:29:22 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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造り酒屋

昔は造る量も多かったんでしょうが、大勢の蔵人がいて、
小さな子供たちもいたそうですね。
子供たちが寝る2階に上り下りするハシゴを外して、
逃げられないようにしていたと話に聞きました。
今では考えられないほどに厳しかったんだと思います。

  • 2012/09/04(火) 12:22:32 |
  • URL |
  • まっちー #-
  • [ 編集 ]

しばらくぶりに(ゴメンナサイ)見させて頂いたら I杜氏の話題でしたので・・・。私も「講演を・・」聞きたいくらいです。I杜氏のの前では自然と背筋が伸びますし、温和ながらベテラン杜氏の観察眼には「毎回 新鮮な発見と驚き」です。蔵娘のMちゃんに言わせると「ウチはI杜氏が すべて・・」とまで言い切りますから。
まさに「業界の宝」ですよね。

  • 2012/09/05(水) 10:06:04 |
  • URL |
  • 酒屋一代目はアマノジャク #-
  • [ 編集 ]

Re: 造り酒屋

子供たちが蔵を走り回っていたっていうのは珍しいかな(笑)。
きっとご家族か何かだったんでしょうね。
2階へのはしごを外すなんて蔵らしいエピソードです(笑)。
大人たちの働き方は厳しかったと思います。
それを語り継ぐ人が少なくなってきているのが寂しいところです。

  • 2012/09/05(水) 17:48:58 |
  • URL |
  • 岳志 #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

I杜氏さんは誰もが認める業界の宝でしょう。
これほどの経験と実績を持った杜氏さんはそうはいませんもんね。
Mさんたちもいい先達に恵まれて、得るところが大きいでしょう。
そういう術のない私には実にうらやましい環境です。
私もいつか直接に教えを受けられるといいんですけどねぇ。

  • 2012/09/05(水) 17:51:39 |
  • URL |
  • 岳志 #-
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