
一升びんの包装を久しぶりにやる機会がありました。と言っても商品が足りなくなったので、慌てて巻くことになっちゃっただけだったんですけどね。
今現在の商品では、びんを包装するのには、写真にあるような丁度一升びんがキッチリ入る不織布に似た化繊の袋を使います。1本ずつ袋に入れて、口をクルクルねじって、輪ゴムで止めるんです。
ひと昔前までは、新聞紙の半分くらいの大きさの、銘柄入りの紙を巻いて包装していました。だから、今でもびんを包装することを「びん巻き」と言ってるんです。紙を巻く場合には少しばかりの熟練が必要で、一升びんの周囲にキッチリと巻いて、びんの頭をきれいに包み込めるようになるのには、ある程度の経験が必要でした。
慣れてくるとどんどん巻けるようになってくるのですが、一升びんはそれなりに重さがありますし、単調な仕事の繰り返しで、たまに手を休めながらでないと巻き続けることはできません。それに、ひとりで巻いていると、手を休めた拍子にしばらくボーっとしてしまって、誰かの足音でフッと我に返ってまた巻き始めるなんていう事もままあるんですよね。
でも、そういう仕事の陰日向の全くない人が、昔長生社にいたんです。Sさんと言いました。Sさんは一旦仕事を始めると、見事なまでに同じペースで、決して手を休めることなくびんを巻き続ける人でした。誰かに見られていようがいまいが、黙々と作業を続けるのです。
手の具合が少し悪くて、自由が利かない指があったのですが、器用にびんを巻いていました。他の人より早いくらいでしたね。それに、疲れたと言って休むようなことがないので、どんどんと作業ははかどるのです。人間的にも優しい笑顔の、朗らかな性格の人物でしたが、彼は手ばかりでなく、もっと大きなハンディを背負っていました。
彼は耳が不自由だった。だから、人の足音も聞こえないし、いつ誰に見られてもしっかりと仕事をしていなくてはならなかったのかもしれない。それとも、耳が健常であっても彼はそういう性格だったのかもしれない。いずれにしても、あの姿を見て、Sさんの事を信頼できないと思う人はいないはずです。
心が仕事ににじみ出ていました。私もそういう人になりたい。一升びんの包装をたまたまやるハメになって、彼のことを思い出しました。もう、亡くなってしまったけれど、私が社会人になってから出会った、尊敬に値する人物のうちのひとりですね。
□□□ 最近3位に定着しとりますな □□□
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