専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

入蔵(2)

入蔵すると、私の生活は一変します。こんなに急激に生活が変化する人もめったにいないでしょう。予定表を見ると、10月はイベント月ですからビッチリと毎日色々書き込まれていますが、11月から4月までは本当に真っ白です。どんな予定が入っても「できません、行けません、ごめんなさい」で押し通します。

もう少し蔵に人手があれば何とかなりますが、やはり生き物を飼うという事は大変なことです。常に気を使っていなくてはなりません。特に麹は米を蒸してから、完成するまでが2昼夜半です。この間に温度や状態が刻々と変化します。その時々の状態に合わせた手入れ作業があり、その変化に対応した方策をとることが必要になってきます。だから目が離せないことになってくるのです。麹を造り始めたら、蔵で毎晩添い寝ということになります。これはどこのお蔵でも一緒です。相当近代化した蔵でも、誰か一人は蔵に泊まって、夜の麹の面倒を見ていると思います。

杜氏をはじめ蔵人がきていた頃には、会社でご飯を三食用意して、お風呂もたいてあったので、家に帰らないでも生活できました。しかし、今は会社に泊まり込むのは私だけですから、その手の賄(まかない)は止めてしまいました。会社と家は1キロくらい離れていますから、夕方の7時頃に麹の手入れ作業を終えたら飛んで家に帰ってお風呂に入って、ご飯を食べて、もし時間があればうたた寝をして、10時頃には会社に戻ります。毎日同じことの繰り返しが、4月のあたままで続きます。

見てくれも変わっちゃいます。もう、スーツもGパンも着ません。毎日蔵専用の服装になります。モコモコしてぜんぜんかっこ良くないのですが、機能的な組み合わせのものにします。頭は坊主にします。ムロで大量に汗をかくので髪は短いほうが楽です。ヒゲは剃らなくなります。お風呂に入ってヒゲを剃る時間がもったいないからです。要するに
「もう人前には出ませんっ!」
という見てくれになるのです。忙しいのもありますが、実際恥ずかしいのでなるべく人には会いません。

ヒゲに関しては、造りにも慣れてきたので、本当は剃るくらいの時間はあるのですが、ここ数年来伸ばしているため、私のヒゲを見ると周りの人たちが
「今年も酒造りが始まったんだね。がんばってね。」
と言ってくれるようになっていて、これも風物詩かなぁ、なんて思って伸ばしています(そんなこたぁないか)。長生社の酒林(新酒ができた印として蔵の前に飾る杉の葉でできた丸い飾り物)だなんていう人もいます。見てくれの良し悪しは別にして、周りの人たちが酒造りの季節なんだと感じてもらえることはいいことだと思っています。

「汚い!」というご意見も甘んじて受けさせていただきます。ハイ・・・。

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