実は、完全に書く時期を逸してしまっているんですが、長生社もかなり前に皆造を迎えておりました(汗)。皆造(かいぞう)っていうのは、読んで字のごとく、「みんなつくちゃった」っていう意味です。最後のもろみを搾り切って、全てがお酒の状態になった日のことを指して言う、酒造業界独特の表現ですね。
考えようによっては、この日を境に蔵の中からこれまで世話を焼いていた生き物がいなくなるわけです。それまでふつふつともろみを発酵させていた酵母菌は酒粕として全てからめ捕られてしまって、きれいな液体部分だけが清酒となります。相手が生き物だからこそ手を抜けなかった、櫂入れ作業や分析作業といった日々の仕事もなくなるんです。
厳密に考えれば、蔵つき酵母を始め微生物の類は蔵の中にウヨウヨしているわけだし、酵母菌も別に死んじゃったわけじゃなくって酒粕の中に生きているわけですから、生き物がいなくなったっていう表現は間違いではあるんだけど、あとは酒粕の中で更にゆっくりと発酵が進んで、夏に使う漬物用の練り粕になるまでは放っておくことになりますから、手がかかることはほとんどないんですよね。
最後のもろみを搾るための機械に送り込む時って、そんなに感激するほどじゃありませんが、それでもようやくひと区切りだっていう感慨はあるんですよね。昨年10月下旬の造り始めからこれまで、1日たりとももろみの世話をしない日はなかったわけで、上手く造れたか否かは別にして「よーやった!」と思える一瞬ではあります。
それでも、終わって嬉しい気持ちの反面、チト寂しい気持ちもないわけじゃぁありません(汗)。それまで手のかかっていた赤ん坊が、ある日突然に大人になっていなくなっちゃうと言えばそれも言い過ぎですが、半年後には気合を入れて再びあの厳しい生活に戻らなくっちゃならないことが分かっていても、「じゃぁまたな!」と声をかけたい気分でもありますね。
ってなわけで、最後のもろみの上でピースサインなんかしたくなるんだな、これが(笑)。タンクの内部もクリーム色だから分かりにくいんですが、この写真のピースが写っている真ん中の部分がほんの少し残った最後のもろみです。タンクの底にV字型の傾斜がついているもんだからこんなふうに残るんです。左側に写っている針金みたいなのは、温度センサーです。
さぁ、こうなるとようやく休みが取れるようになってきます。餌やりこそありませんが、お酒造りは農業というか酪農と似ているわけで、生きている限りは面倒を見なくっちゃならない宿命ですが、畜産業と違って半年は生き物のいない時期があるわけですから、その辺をメリハリととらえられるのはこの仕事のいいところじゃないかと思いますね。
とは言っても、完全に終了したっていう段階になるまでには、まだまだ仕事が残っているわけですし、いつも読者の皆さんにも助言をいただくように、最後まで気を抜かずにやり切りたいもんです。これまではちょっと休めませんでしたが、ゴールデンウィークは少しは休めるかな・・・ちなみに、29日の祝日は光前寺のイベントで売り子さんです(涙)。
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