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専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

蕎麦物語(その2)

用意を周到に整えて、その日、その男は自ら蕎麦打ちを始めたんじゃ。準備に抜かりはないし、材料もいいものを手に入れ、頭の中には書物から得た知識が詰まっておった。もう、その男の頭の中は、それからひと時も経った後に食べられるはずの、美味しそうな山盛りの蕎麦の絵で一杯になっておったそうな。

ところがじゃ、いざ始めてみると、どこの誰が考えても分かりそうなもんじゃが、初心者が最初からつまづくことなくできるほど蕎麦打ちは簡単にできるはずはないのじゃ。もし、そうじゃったら、まちの蕎麦屋なんぞ無くてもいいはずじゃからの。それも、誰にも教えを請わずに書物からの知識だけで太刀打ちできるほど、実際の現場は甘くはないのじゃ。

蕎麦打ちには、ある程度決められた手順というものがあって、その通りに事を進めねばまともな蕎麦にはならんそうな。その手順の中にはいくつかの行程があって、それを手際よくこなして、全工程をなるべく短い時間の中に収めるのが名人の名人だる所以だそうじゃ。そして、その工程ごとに特別な道具と、それを使いこなす業が必要だそうな。

その男は、蕎麦粉を水と混ぜる作業から始めたが、単純に粉と水を混ぜるなどという話ではないのじゃ。微妙な水加減と、まんべんなく水をいきわたらせるための技術がある。書物からの知識だけではとても成せる業ではない。その男は、実際に作業を始めて、ようやくそのことに気付き始めたのじゃ。

それでも、その男は強引に蕎麦打ちを続けたそうな。蕎麦粉は舞い上がる、つなぎの小麦粉はひっくり返す、手に付いたそば粉を振り払ってそこらじゅうに飛ばすで、その男のいつもは優しい女房もカンカンになって怒りだしたのじゃ。常日頃尻に敷かれているその男も、ついつい声が大きくなっていったそうな。

一番可哀想なのは、その男の娘じゃった。いつもはその男に溺愛されて、とてもよくなついておったのじゃが、お父ちゃんの慌てふためきぶりに興味津々で、ついついいろいろと話しかけてしまった。最初は優しく答えておったその男も、思う通りにならない蕎麦打ちに業を煮やして、そのうちに「ちょっと、黙っとれっ!」と怒鳴りつける始末。

いつもは怒られたこともない娘は「お父ちゃんが、怒鳴ったー、びえーーーん」と泣き出すわ、女房は「この子に八つ当たりすることないでしょっ!」と角を出すわ、家の中は蕎麦粉まみれだわ、正にこの世のものとも思えない阿鼻叫喚の光景が家の中に出現してしまったそうな。全くもって、バカな男じゃ。

そして、その男が作った最初の作品は、水の回しが足りずに、蕎麦粉が塊りになってしまって、上手くのすこともできない大失敗作だったそうな。有り体に言えば、大きな大きな蕎麦煎餅になってしまったそうな。それでも、女房だけは気を使って、「食べられないことはないわ」と口にしてくれたそうじゃ・・・

・・・作り話ではありません(笑)。若干誇張して書いてはあるものの、本当にこんな感じでした(汗)。今でも、あの時お父ちゃんに怒鳴られたと娘には言われます。失敗してもいいやっていう気持ちでいれば良かったんですが、必ずできると思い込んでますから、全てがパニクっちゃったんですよね。しかし、それでも岳志はあきらめなかったんです・・・


□□□ 意地でこの文体で通すことにしました(笑) □□□
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