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専務取締役杜氏の純米酒ブログ

期せずして杜氏になっちまった造り酒屋後継ぎの純米蔵奮闘記

有機と純米

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たまたま今日、信濃鶴で使っている飯島の美山錦を作ってくれている農家のHさんのところに顔を出すと、珍しい作業をしておられました。刈り取りも終わったこの時期の田んぼで、こんな作業をしているのを見たことがある人は少ないんじゃないですかね。これがまた、いきなり冬になったかと思うくらいの寒空の下でやってたんですけどね。

これは、農薬とか化学肥料の類じゃなくって、いろんな植物なんかを発酵させて取り出した『酵素』なんだそうです。極力化学肥料に頼らない、有機的なある農法でお米を作っているHさん特有の仕事だっていうことです。この時期にこの酵素を田んぼにまいて、わらに染み込ませておくのがいいんだそうです。

Hさんは他の作物を作るのに使うもんだからこの機械を持っているんですが、他の農家さんにはあまりないものらしいですから、「こういうものがないと、このやり方はできんわなぁ」なんておっしゃってましたね。有機的な農法を目指すと、やっぱり手がかかるようになるらしくて、それがこういうやり方が広まらない一番の原因じゃないかとも言っておられましたね。

そのそもこの米作り自体も、まだ実験段階的な要素が多くて、私もできたお米を昨年1回使っただけですから、お酒造りに関してもまだまだ未知数な美山錦ではあります。収量的には通常の育て方をした美山錦とは変わらないらしいですが、お酒の仕込みに使う段階では、一般的な美山錦より溶け易いかなっていう印象を持ってるんですけどね。

このお米は、法律で定められているところの『有機米』とは言えないんです。有機とうたうためには、スンゲー厳格な条件をクリアしなくっちゃならなくて、そのためにお金も労力もかかるんだそうです。Hさんのお米は、それほどまでして『有機』の名前は必要ないけれども、それと同等の資格を持ったものを作ろうとする、とある県内スーパーさんの取り組みの中の一部なんです。

そういう努力には必ず意味や価値があって、それを評価してくれるお客さんに対しては商品の付加価値が上がるんでしょうね。例えば、そういう酒米で造ったお酒が必ず他のお酒より秀でているかどうかは、残念ながら断言はできないんですが、そういうお酒に対してちょっと高い金額を払ってくれるお客さんは少なからずいるんですよね。

ただし、『有機』っていうだけでありがたがっていたんじゃ偏った見方になっちゃうでしょう。それはごく一部のものについた特別な名前であって、その他のものはそれ以下だっていう識別のためのライン引きの役割を持っているんじゃぁありません。どちらも農家の皆さんが手塩にかけて育てたものであることに違いはないわけですもんね。

『純米』っていう言葉についても同じことが言えるでしょう。私はアルコール添加のお酒が嫌いじゃありませんし、記事にする時にも最大限の敬意を払って書いているつもりです。でも、こと純米蔵の専務が言うと、他の蔵の足を引っ張る表現に見えちゃうことだってあるかもしれません。私としても主張しなくっちゃならない部分もあるわけですが、もしそういうことを感じるお蔵さんがおられましたら、この場を借りてお詫び申し上げる次第です。

当然、そういうつもりは全くありません。それは、どんな蔵の人たちも手を抜いて適当になんて造っていないと知っているからです。信濃鶴が純米一本でやっていこうとするのは、そこに集中して特化することで生き残りを賭けているにすぎません。そういう目に見える言葉ばかりを振りかざすんじゃなくって、ひとつの方針に沿って真摯に自分の作り出しているものに向き合っているんだという、その精神こそが大切なんでしょうね。


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